解説:航空写真アーカイブ

アーカイブの作成について

 1945年8月6日と9日、アメリ カ軍の戦略爆撃機B-29によって広島と⻑崎に原子爆弾が投下されました。この約8カ月前、戦略爆撃機B-29を改造してF-13と呼ばれる写真偵察機が、広島と⻑崎など原子爆弾を投下するための情報収集を当りました。当時としては最先端の航空写真測量によるものです。写真は被爆からおよそ1ヶ月後にも撮影されています。

米ワシントン郊外にあるカレッジパーク・国立公文書館には、1945年3月から 8 月 までの間に F-13 により⻑崎周辺を撮影した写真フィルムが保管されており、それらは誰でも閲覧・利用することができます。一方で、公開された写真を高画質の状態でスキャニングするためには、フィルムスキャナーを持ち込む必要があります。今回のアーカイブで使用している写真については、日本地図センターがフィルムスキャナーを使用して高解像度でスキャンした航空写真デジタルデータを購入し、利用しています。また、購入した写真は、よりオリジナルデータに近い状態にするために、ArcGIS と Adobe Photoshop を活用して画質向上を試みています。

アーカイブでは、これらの航空写真を近年普及しているクラウド環境を活用した平和教育教材のためのデジタルアース・システム(Re earth)上に実装しています。米軍が撮影された写真には航空写真独特の地面に対するカメラの傾きが含まれていたり、撮影範囲は狭い範囲に限定されていることから、対象地域の地図に対する傾きを補正するための「ジオレファレンス作業」と、写真をつなぎ合わせる「マージ作業」を行いました。

なお、被爆後の航空写真については、詳細な航空写真が浦上エリアに限定していたこともあり、実装範囲が長崎駅周辺までとなっています。

アーカイブの特徴について

航空写真アーカイブ最大の特徴は、被爆前と被爆後を比較しながら閲覧できるというところです。航空写真を利用するわけですから、例えば山と平地の高低差によって被害が異なることや、あるいは焼け野が原になった場所が被爆前はどんな街並みだったのかなどを探ることができます。また、画面上では被爆前後に限らず、現在の航空写真を見ることができます。フィールドワークの現場にipad等のタブレットを導入することで、現在地が被爆前はどのような街並みだったのか、そして原爆によってどのように破壊されたのかについて、これまでにはない手法で学ぶことが可能になります。

また、今回は学生たちが中心となって大型の被爆遺構、具体的には長崎医科大学や城山小学校、浦上天主堂などを3Dで作成しました。当時はほとんどが木造の建物だったこともあり焼け尽くされた浦上に、ぽつんとそびえ立つこれらの建物が、異様な光景だったということは被爆者の方々が多くお話しされていることでもあります。こうした当時の情景を追体験してもらおうという試みです。

広島版の作成について

2023年度は広島版の作成も予定しています。

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