
被爆前の日常写真を活用した授業について
目次
はじめに
本Webサイトに掲載している資料・スライド教材は学校現場など教育現場で使用いただけます。このページでは、これまでの教育実践をもとに活用のヒントとなるような情報をまとめます。
なぜ被爆前の日常なのか
原爆による破壊は、私たちの想像を越える残酷なものです。例えば、長崎原爆資料館に展示されている「黒焦げの少年」を目の当たりにしたときに、写真に映る少年が死を迎えるまで日常を過ごしていたこと忘れてしまいます。だけどきっと少年は、あの日もたしかに生きていて、私たちと同じように好きな食べ物があり、熱中していることがあったのです。
原爆は何を奪ったのか。このことを考えるためには、原爆が投下される前の日常を知ることが不可欠です。そこで「被爆前の日常アーカイブ」では、あえて何気ない家族や友人との時間を写した写真を中心に取り扱っています。80年以上前の写真は古く、着ている服も違うかもしれません。しかし、写真を撮る瞬間、家族や友人とのひとときはどれだけ時代が変わっても、変わらないものがあります。
戦争とは何か
また、特にスライド教材では、原爆投下直前に限らず戦前から戦中にかけて被爆前の日常の様子を長い時間枠で捉えようと試みています。これは、日本がどのように戦争の時代へと進んだのか、戦時中の雰囲気はどんな様子だったのか、その変化をたどれるような工夫です。私たちは現在を「戦後」と表しますが、世界の戦争を目の当たりにすれば明らかであるように、油断すれば「戦前」になりえます。教科書で習うような出来事を、人々の生活の目線でたどるからこそ、今と繋がる部分が見えてきます。
学習の場面について
本サイトで公開している資料は、修学旅行や夏の平和学習の際に広島・長崎の被爆の実相(とりわけ8/6、8/9以降の出来事)を学ぶ際の補足資料や、事前学習として活用いただくことをお勧めしています。
学習する際の注意点
本サイトで公開している資料を学習で活用される際には、以下の点に注意してください
- 戦時中の日常を写した写真のなかには家族や友人との幸せで、楽しい時間も多く含まれています。しかしこれは、例えば新型コロナウイルスの自粛期間のように辛い時期にも、家族や友人とのひとときがあったことということにすぎません。特に小学生への学習で活用される際には「戦時中は楽しかった」と誤認されることのないように注意してください。
- 当時は写真を撮影することそのものが高価な行為でした。庶民は写真撮影といえば、成人式など特別な機会に写真館で記念写真を撮ることができる程度でした。当時、カメラ1台の価格は教員の給料の半年分をすべて使ってようやく手にすることができるような高級品でした。つまり、家族との日常を写したスナップ写真に映る人々は、当時のなかでは比較的裕福だった家庭であることがほとんどです。(※ 卒業アルバム用に写真館のカメラマンが写した写真も含まれることもあります)「戦時中は実は豊かだった」と誤認されることのないように注意してください。
- 資料やスライド教材のなかでは当時の写真をAIによってカラー化した写真が含まれていますが、カラー写真として撮影されたものではなく、モノクロの写真をAIが着色したものです。例えば服の色などはAIが誤認して当時の色を再現できなかったケースもあります。
スライド教材を活用した授業例
スライド教材を活用した学習の例をご紹介します。
流れ:50分授業1回
- イントロダクション:学習のねらいや流れの説明(5分)
- 戦時中や原爆についてのイメージを話す:グループワークもしくは挙手(5分)
- スライド教材を使って当時の様子を説明(15分)
- 教材を使った感想をグループワークで共有(10分)
- グループで話したことを全体で共有、必要に応じて補足(10分)
- まとめ(5分)
グループワークでの質問例
- どのスライドが印象に残った?その理由は?
- 戦時中や被爆前の日常を知ってどんな発見がありましたか?
- 当時と今の自分の共通点はありますか?
- 被爆の実相についてのとらえかたに変化はありましたか?